日本で初めて自動車ワックス(オートワックス)を製造したのは戦後の混乱期を過ぎて原料の配給制が撤廃された頃の話だそうです。
進駐軍のPX(生協)から余ったワックスが市中のガソリンスタンドに僅かながら流れていて、米国製の2種類だったそうです。
現在もカーショップに並んでいるなじみのある名前で、車といえばほとんどが米国製で台数は少ない時代でもワックスの需要は結構あったようで、市中では品不足していたそうです。
昭和25年(1950年)前後、国産の自動車ワックスが発売されると同時に需要は益々高まり、この時代のワックスはカルナバロウ(ブラジル原産)を中心とし、数種のロウ分と石油溶剤の混合物。
車の塗装はラッカー塗装で光沢は今とは比較にならないもので、上記成分で充分に満足のいくワックスであった。30年代(1955年)後半に入りモータリゼーションの高まりと同時に塗料も進歩し、メラミン・エポキシなど樹脂を使用した塗料が施されるようになりました。
ワックスに於いてもシリコーンの出現により目覚しい進歩をとげ、光沢がよく撥水性が大きく従来のワックスとはまるで違った物になりました。
それまで30cm四方を塗って拭き取らなければ拭き取れなくなってしまうものが、車1台塗ってから拭き取れば良くなり大革命を遂げていきます。
40年代(1965年)に入り、世の中も移り変わりが早く、従来のワックス掛けのように汚れ落としをして、その後ワックス掛けの手間を掛けないように工夫されたのが練り状ワックスで、
汚れ落としとワックス掛けを一度の作業で済ませてしまう便利なものができました。
50年代(1975年)になると塗料や塗装技術が益々進歩し、塗装表面の硬度が強く耐候性や光沢が上がり、従来できなかった塗色技法が用いられ塗装は多様化していきましたが、ワックスはたいした進歩がなかったようです。
ワックスメーカーはユーザーの目を撥水性に向け、撥水性こそが被膜の強さと持続性と認識させるようにPRし始め、これが後のウォータースポット(雨じみ・水滴痕)となってしまう訳です。
これはワックスメーカーの大失敗で、未だにこの状況から脱却することができないのは、他に変わる効き目の証を表現することができないからでしょう。
無理の無いことですがワックスの被膜は薄く、被膜として確認できる物ではありませんから、光沢がある、雨を弾くことが効き目の証とするしか手段が無かったと言うことでしょう。
ワックスイコールコーティングの歴史で、コーティングは板金業界で大昔から行なわれていた技法でありました。
使用した材料・道具に違いはありますが、板金塗装の後コンパウンドを使い塗装の表面を削り平滑にしたのちに、固形ワックスを乗せバフで従来の塗装と同様の光沢になるまで繰り返し磨き上げていたのです。
ですから技法のルーツは塗装屋さんにあったのです。
日本人は車を世界一キレイに乗っている民族でしょうか?
車を綺麗に磨く技術はあっても、それを保護・維持することができない。
でもこんなキャッチコピーが「1年間ワックス不要」
「1年間ワックス不要」の広告が聞かれるようになったのはは20年以上前のことでしょうか。
1960年代後半にアメリカから持ち込まれた「ミグ処理」の再来かと。
ミグは樹脂被膜が塗装を覆い最初のうちは良いのですが、塗装性の分厚い被膜だったのでしょうか、数ヶ月経過すると樹脂にひび割れが起きて塗装とともにミグの被膜の剥離が起き、塗装が無残な姿になってクレームが多発したそうです。
原因はミグの被膜が硬く柔軟性が無く車の捻れに耐えられなかったのではないでしょうか。
再び1年間ワックス不要の広告が聞かれるようになった時にはミグの再来かと、しかし広告の内容からはそれらしき表現がなく別のものでした。
1年間塗装をどのようにして保護をするのか?
そのFC(フランチャイズ)では、 材料はエマルジョン(乳化)ワックスを使い作業するだけでした。
エマルジョンワックスで1年間持続性はとても無理で1~2ヶ月がせいぜいです。
FC本部ではエマルジョンワックスが塗装表面の無数のピンホールにガラス玉の微粒子を埋め込むのだと説明をするように教育をされていたようです。
これではとても1年間ノーワックスは無理でしょうね。
国内のワックスメーカーは最近までコーティング材料に目を向ける製造メーカーはあまり無く、アメリカ製の様々なエマルジョンワックスが輸入されコーティングに使われています。
最初の頃に比べればフッ素などが入り多少品質も向上はしていますが、根本的な材料部分では海外では日本のようなコーティング剤は理解されず、品質が目覚しく変化することはないようです。
何故ならコーティングとして1分野をなしているのは日本特有のもので、輸入材料は国内で様々な物質を混合され幾つもの商品に分かれ特長を替えることに終始していたのです。
つまり、コーティング剤の性能の進化はほとんどなかったと言っても過言ではありません。
ワックスもコーティング剤の1種類です。
性能を活かした使い方をすれば立派なコート剤です。
ワックスはご存知のように固形タイプ・液体タイプ・練りタイプというように3種類に大別ができます。
固形タイプには植物系ワックスの代表カルナバ(ブラジル産の天然樹脂)植物系に様々な機能を付与した合成ワックス、石油系から抽出したパラフィンワックスなど鉱物系・合成樹脂・石油系溶剤などの混合物でできています。
液体ワックスはこれらに界面活性剤(洗剤に含まれている成分)・水を加えた混合物で、練りワックスはこれに珪藻土(化石化藻類の粉末)を加えた混合物でできています。
ポリマー液に使われるいずれかの天然ワックスの成分は、グリセリンと油脂とのきわめて複雑な化合物となっています。
主成分のワックスは時間とともに化学反応を起こし、グリセリンと脂肪酸に化学変化して、グリセリンは水に溶けやすい成分ですから雨に溶け失われ、脂肪酸は酸化物として塗装面に付着して、塗装に対し酸化を呼びかけ汚れを吸着し、汚れを伴った酸化被膜が塗装面全体を覆ってしまうことになります。
塗装面に汚れが付着し取れなくなるのは、固着した酸化物が塗装を酸化させてしまう(鶏と卵で)どちらともなく起きる現象です。
お互いが酸化成分であるために起きる酸化共鳴と言う現象で、塗装の表面をザラザラにし肌荒れを起こし汚れてしまうのです。
この酸化現象は防ぐことができないのでしょうか。
よく聞くことですが、塗装面に何も塗らなければ汚れも付かないし、酸化もしないのだと言われる方がいます。
最近の塗料は良質な耐候性を持ち、マメに洗っていれば1年や2年は耐えられる性質を持ってはいますが、突然に酸化が起きるのではありません。じわりじわりと日々酸化は進み目視できる頃は手遅れになっているのが実状です。
塗装の試験は様々な角度から行なわれてはいるのでしょうが、試験と現実の差は出てしまうようです。
塗装の耐候性試験とは塗面から粉末状に塗装が剥離する時点までの期間を言いますから、剥離を起こした時はかなり酸化劣化をしている訳です。
前述のように何もしない方が良いのだと考えるのは、ナイフの刃に指を当て切れると判っているのに指を動かすのと同じでしょう。
血が出てからでは遅いのです。その前に手を打たれることをお勧めします。
塗装表面で時として犠牲になりながら塗装を守り、簡単に蘇がえらせることができるのが自動車用コーティングです。
コーティング被膜は塗料と異なり、キズは付いても塗料にキズを付けることなく、容易に再生ができる物質でなければなりません。
傷ついたコーティング被膜を除去するために、塗装膜まで研磨しなくてはならないようでは塗装と同じです。
塗装表面にできたコーティング被膜は強固に塗装を保護するが、傷ついた時に容易に剥離でき、簡単に再施工でき、今ある被膜を取り除くことなく新しく被膜を作ることが可能なコーティング剤が21世紀型のコーティング剤「パワーGFコート」です。